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癒えぬ深傷

以前も、書いたことがあるけれど、

パソコンにストックしてある、

「ポンポン船の旅」

倉掛 喜八郎 著 大阪書籍 版
クラガケ,キハチロウ オオサカシヨセキ 
1986年05月 発行

で生野島のことが扱われていたので、再度、読んでみることにしました。


この本のことに関して、

大崎上島を卒論のテーマにされた、

アリストテレスな時間:倉掛喜八郎著「ポンポン船の旅 瀬戸内漂白に町興しに関連して詳しく書かれています。



生野島(広島・東野町)



白い一本道を峠まで上がると、見渡す限り色づくみかんの段々畑が広がっていた。

雲ひとつない青空。弧を描く入江、連なり重なる島々は和かな秋の陽に包まれている。

絣のモンペに地下足袋、色褪せた打出の小槌の模様の前掛けをしたおばさんが足元の短い影を見つめるようにうつむいて上がってきた。

白髪頭、陽焼けの顔に深いしわ、節くれだつ両手。

戦争が人生の歯車を狂わせた。大阪の空襲に遭い焼けだされ、戦後二十二年に無人のこの島に入植、開墾。

苦渋の幾年月―暮らしは今も昔もつつましく、不便なままだ。

「夫は町の暮らししか知らず、慣れない仕事の苦労がたたって長患い。三十をとうに超えた一人息子に嫁がこんで……」とまた、うつむいて峠を下る。


「お達者で・・・・・・」、振りかえったその顔にかすかな微笑み。

一家の住む月の浦への野辺に晩菊、あざみ、鳳仙花。磯辺の木立ちの間に数軒の捨て家。


せがむ子のない庭に山桜桃が熟す。雨風にさらされる破れ障子の暗闇に無言のつぶやき。


小鳥のさえずり、磯に群れ遊ぶサヨリ、フグの子。一見平和な風景の島影に、癒えることのない戦争の深傷を負い、ひっそりと暮らす人がいる。やり直しのきかぬ人生――。

せつなく悲しい。

島々を歩いてみると、じっと海の彼方を見つめる年寄りが多くいる。

海のかたの幸せを夢見ながら歳を重ねて、島を出ることができなかった人たちであった。


戦争の痛みをそれぞれが胸に刻んでいた。


と書かれています。


また、最近では、生野島の魅力に魅入られた体験を書かれた店長さんの

「店長日記」には、苦難と戦いながらも、たくましい生野島の人が描かれています。

この方のサイトも、しっかり基礎から研究され、さすがと納得できる内容のブログです。

さすが、書物を扱われ長い間経験された職人さんに近い文章は凄いと思います。


こうした、諸兄の先輩方と、私の年齢はおそらく、二回り以上違うと思いますが、

(世代間の格差は当然あります)

敢えて、私的生野島論を述べさせてもらうと、

戦わずして生活できなかったリアリティの時代と、

物質的に行き分かった環境でのイマジネーションの時代では、

時代そのものの扱い方に違いが出てくる。


倉掛 喜八郎さんが書かれた、「生野島」と、「癒えぬ深傷」は、

この場所だから、

書くことのできた内容なのだろうか?

深い相関関係を、感じることができませんでした。

他の、内容、

夫婦行商船
大崎上島 (広島・木江町)

母-島を動かず
斎島 (広島・豊浜町)

などは、「なるほど」

と納得できるものですから、

ちょっと残念でした。


それと、もうひとつ

福本清先生が編集された、『生野島物語』は、生野島やわらぎ会が、1985年に出版されました。

在庫は、なんと国会図書館の蔵書でヒットしました。

最近では、地元の金原 兼雄さんが、関連書物をだされているようです。

市立竹原書院図書館でヒットしました。

ページ数から判断すると、資料集め、裏付け取材など、

今となっては厳しいのかもと推察します。



足利浄圓師の「光輪」を読んでいますが、

仏法書なるものを、読んだことのない、

(逆に、現代の「仏教界の堕落」の本は読んでいる)

ミーハーな私にとって、足利浄圓師の柔軟な発想を知るにつけ、

一体、どんな人間関係が生野島であったのか、

知りたくなりました。


近くて、遠くにあった生野島

迦洞無坪に

山頭火の訪れた島として、

生活で生きることを実践してきた島


理想郷と逆行し、もっとバブルにふさわしくない場所で、観光開発に挫折した生野島

難を逃れた原生の入江


50年近く経過して、

現代の武器 パソコンで、検索しても、

真実は、遙か彼方です。

ゼロから

人が生きる

歩く

進む

大変なことです。

到底、私には、わかりません。

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